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グローバル化が進む中、タイでは以前より多くの日系企業が進出し、ビジネスを展開してきました。
現在も、日本からタイへの直接投資額(2025年1月から6月の申請ベース)は約498億バーツと世界でも第5位と多く、6,083社(2021年3月時点)もの日系企業がタイに進出しています。
一方で、タイビジネスのトレンドは時代とともに変化しており、タイビジネスを成功させるうえで求められる要素も変わりつつあります。
本コラムでは、タイ駐在をしていた筆者の経験も踏まえながら、現在のタイビジネスにおいて何が重要なのかをご説明いたします。
出典1:Foreign Direct Investment Statistics and Summary Years 2025 January - March(THAILAND BOARD OF INVESTMENT)
出典2:タイ日系企業進出動向調査 2024 年度(独立行政法人日本貿易振興機構)
タイ進出を取り巻くビジネス環境の変化
タイビジネスのトレンドは、過去と比較して大きく変化しています。
かつては人件費の安いタイでものをつくり、その製品を日本をはじめとする世界各国へ輸出するモデルが主流でした。
特に1985年のプラザ合意以降、日系企業の進出は加速し、大量生産を行うものづくり企業にとって、タイは非常に重要な製造拠点として位置付けられてきました。
その後、人件費が年々増加する中でコストメリットを十分に享受できなくなり、従来のビジネスモデルは限界を迎えました。
こうした状況の中、タイ経済の成長およびタイ国民の所得増加により、タイ国内の内需を狙ったサービス業の進出が近年増加しています。
また、コロナ禍以降は特にデジタル化が進み、eコマースやデジタルマーケティングの重要性も従来に比べて高まっています。
現在では、タイ国内の内需に成長余地を見出し、進出を図る日系企業が増加しています。
例えばタイでは近年、健康志向が高まっています。
こうした健康に関心の高い富裕層向けに、健康に関する価値提供を行うため、日本からの輸出だけでなく、販売拠点としてのタイ進出を検討する企業もあります。
また、タイに進出するもう一つの理由として、タイをハブ拠点として東南アジア諸国へビジネスを展開しようとする企業が増加しています。
タイではこのような企業を奨励するためのインセンティブ制度があり、実際にそれを活用して東南アジア諸国へビジネスを拡大している企業も存在します。

タイ進出のメリット
タイに進出するメリットの一つに、「投資奨励制度(Investment Promotion Schemes)」があります。
タイ政府は、国内外の企業に対して多様な恩典を用意し、戦略的産業や地域への投資を促進しています。
本章では、代表的な制度を以下に整理します。
1. 国際ビジネスセンター(IBC:International Business Center)制度
(1)概要
IBC制度は、タイをASEAN地域のハブ拠点として活用する企業を支援する仕組みで、タイ国内で定められた12種の国際業務に従事する企業が対象です。
(2)対象となる主な事業活動(例)
・財務管理、資金調達
・物流、サプライチェーン管理
・研究開発(R&D)
・トレーニングサービス
・国際貿易管理 など
(3)適用条件(例)
・払込資本金:1,000万バーツ以上
・各種業務の実体拠点がタイ国内にあること
(4)主な恩典
・機械の輸入関税免除(研究開発やトレーニング目的に限る)
・外国人事業ライセンスの付与
・土地所有の許可(通常、外国企業には制限あり)
・税務優遇(法人税率の軽減や免除)など
2. BOI一般投資奨励制度(Board of Investment)
(1)概要
(2)対象分野の例
・製造業、加工業
・研究開発(R&D)
・再生可能エネルギー、EV関連、航空宇宙、医療、農業加工など
(3)適用条件(例)
・最低投資額:100万バーツ以上(運転資金・土地代除く)
・技術移転、雇用創出などの社会的貢献要素
(4)主な恩典
・法人税の免除(最大13年)または軽減
・機械類に対する輸入関税の免除
・外国人専門家のビザ・労働許可優遇
・土地所有の許可
3. 特定業種・戦略分野向け恩典(新経済3本柱)
(1)概要
タイ政府が将来的な成長を見込む戦略分野に対して、特別な恩典を設定。以下の3つのコンセプトに基づき運用されています。
(2)対象産業
・デジタル、AI、ロボティクス、バイオテクノロジー等
・スタートアップ、ソフトウェア、Eコマース等
・グリーンテック、再生可能エネルギー、バイオ燃料等
(3)恩典(例)
・法人税の50%免除(一定期間)
・輸入関税の軽減または免除
・土地所有許可など、非税務恩典も対象に
4. 地域分散投資に対する追加恩典(Zoning)
(1)概要
タイ政府はバンコク首都圏に集中する投資を地方へ分散させるため、特定地域や工業団地に投資する企業に対して、追加恩典を提供。
(2)恩典(例)
・法人税減免期間の延長
・地方インフラ整備費の控除
・労働者住宅補助などの間接的支援
※制度の適用は業種や立地によって異なるため、詳細な事前確認が必要です。
たとえば、研究開発分野への投資や地方工業団地への進出などでは、一般制度よりもさらに手厚い恩典が得られるケースもあります。
以上のように、タイ政府は「東南アジアの投資・産業拠点」という国家戦略に基づき、多様な制度を整備しています。進出企業は、各制度の内容と適用条件をよく確認したうえで、最も自社に有利な制度を選択することが重要です。
出典3:INTERNATIONAL BUSINESS CENTER(タイ:国際ビジネスセンター[IBC])
出典4:タイ国投資委員会ガイド2025(Thailand Board of Investment)
タイ進出における注意点
タイ進出におけるメリットをこれまで述べてきましたが、一方でタイ進出において注意すべき点は、大きく分けて以下の3点あります。
1点目は政治的リスクです。タイでは過去に軍事クーデターや短期間の政権交代が繰り返されており、2023年の総選挙後も政権発足まで混乱が生じました。また、新内閣発足後も政権の安定性には懸念が残されています。今後もこのような政治的リスクが生じる可能性は否定できない状況です。
2点目は文化の違いです。タイの文化や慣習は日本とは異なっており、タイの文化に適応する姿勢が求められます。これはタイに限らず、海外でビジネスを行う上で極めて重要な視点です。海外経験の浅い方は、日本の考え方が正しいという前提に陥りがちですが、海外には海外の文化があり、それを尊重することが必要です。また、タイ人とコミュニケーションを取る際にも配慮が求められます。特にタイ人を叱責する場合には、人前で叱ることは避けなければなりません。人前で叱ってしまうと、面子を潰されたと受け取られ、大きな問題に発展する可能性があります。
3点目は競争環境の激化です。タイには既に多くの日系企業が進出しており、進出すれば成功するという状況ではありません。進出前に市場調査を行い、競争環境を十分に把握する必要があります。また、近年はタイの内需を狙って進出する企業が増えていますが、地域ごとに消費者の嗜好が異なることもあり、現地視察含めた事前調査が不可欠です。

まとめ
以上、タイ進出を成功させるためのポイントとして、タイにおけるビジネストレンド、タイに投資するメリット、タイ進出における注意点についてご説明しました。確かに、タイに限らず海外進出は企業にとって一定のリスクを伴います。しかし、リスク以上のリターンを得られる可能性も十分にあり、海外進出を避けて成長機会を失うよりは、可能性を求めて海外進出に挑戦することが、企業の持続的な成長にとって不可欠です。
また、近年ではゼロからの進出では軌道に乗るまでに時間がかかるため、M&Aにより既に進出している企業を買収するケースも多く見られます。いずれにしても、事前調査を丁寧に行い、多角的に選択肢を検討したうえで進出することが重要です。
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