INTERVIEW インタビュー
日本のすべての中堅企業・中規模企業へ
「株式上場」という新しい可能性と持続的成長を
産業競争力や良質な雇用を担う中堅企業の成長は、いまや国の重点政策でもあります。株式上場を全国の中堅企業・中規模企業の持続的成長、さらにはステージアップしていく上でのメルクマールと位置づける株式会社タナベコンサルティングは、2025年5月にJ-Adviser資格を取得しました。大企業から中堅企業・中規模企業の経営者の決断を全国で長年支える同社の視点から、「ファーストステップ」としての上場の意義と戦略をご紹介します。
※取材先様のお役職・タナベコンサルティング社員は、取材当時のもの
トップマネジメントアプローチにIPO支援のメニューを追加
J-Adviser資格を取得された理由を教えてください。
若松
代表取締役社長 若松孝彦
まず挙げられるのは、日本の経営コンサルティングのパイオニアである私たちが1957(昭和32)年の創業以来、ビジネスドクターとして既に数多くの上場支援を行い、自社(株式会社タナベコンサルティンググループ)も東証プライム上場企業として成長してきたという実績です。
加えて、TPMへの上場支援を、企業のトップマネジメントから寄せられる課題への新たな診療科目に加えたかったことが一つ。さらに全国10事業所を持つ地域密着型で、中堅企業に最も精通した経営コンサルティングファームとして、「優良企業・成長企業が今後も持続的成長を遂げるためには、上場の検討を通じた経営の質的向上が必須である」と考えるためです。
TPM上場は、企業が抱えるどのような課題の解決策になると考えていますか。
若松
いま多くの会社が課題とする人材の採用において、「上場企業」という信用が効果的なブランディングになることは、言うまでもありません。
また、成長を加速させるためのM&Aや事業承継のニーズもあります。新たな会社をいかにして自社に迎えるか、あるいは会社をどう引き継いでいくかという問題ですね。とりわけ事業承継では、役員・従業員を含む親族外への承継が既に多数派です。そこで上場という"型"を通じて、ガバナンス体制を整備・強化し、企業価値を高める道筋を示したいと考えています。
さらに言うと、上場を早い段階から検討し、そのための条件を先んじて整備しておくことは、経営の中身を強くし、いずれ実際に上場する際の負担を減らす「転ばぬ先の杖」にもなります。長期のご契約が多く、経営者3代・4代にわたるお付き合いも珍しくない私たちにとっては、こうした予防医学のような役割を担えることも強みになると考えています。
また、成長を加速させるためのM&Aや事業承継のニーズもあります。新たな会社をいかにして自社に迎えるか、あるいは会社をどう引き継いでいくかという問題ですね。とりわけ事業承継では、役員・従業員を含む親族外への承継が既に多数派です。そこで上場という"型"を通じて、ガバナンス体制を整備・強化し、企業価値を高める道筋を示したいと考えています。
さらに言うと、上場を早い段階から検討し、そのための条件を先んじて整備しておくことは、経営の中身を強くし、いずれ実際に上場する際の負担を減らす「転ばぬ先の杖」にもなります。長期のご契約が多く、経営者3代・4代にわたるお付き合いも珍しくない私たちにとっては、こうした予防医学のような役割を担えることも強みになると考えています。
藁田
専務取締役 藁田 勝
コンサルティングで培った経験をもとに深く掘り下げて診断し、トップマネジメントの皆さんと一緒に方向性を決めていけるのが、私たちの予備調査の特長だと考えています。
上場前後を貫く長期視点で「1・3・5の成長の壁」を突破
特にTPMをアピールしたい企業像はありますか。
若松
どんどん成長していこうという意気込みで、通過点となる上場を意識されている企業はもちろんですが、完全なオーナー経営からの脱却、あるいはオーナーシップは維持しつつも新たな経営スタイルを模索していく、そういう選択肢としてもTPMをご紹介したいと考えています。
各地で中堅企業・中規模企業の経営者の方にお話を伺っていると、「オーナーが支配権を失う」といった先入観から、そもそも上場という選択肢を外されているケースが散見されます。やっぱりそれは、少しもったいないと思いますね。
TPMでは上場企業としてふさわしいレベルのガバナンスが求められる一方、東証の一般市場(プライム・スタンダード・グロース)とは異なり、株主数や流通株式比率といった数値基準がありません。私たちは中堅企業・中規模企業のM&Aやグループ経営、ホールディングス化を頻繁にお手伝いしますが、上場もそうした成長戦略の中に位置づけるべきであり、そこで価値を提供できると確信しています。
各地で中堅企業・中規模企業の経営者の方にお話を伺っていると、「オーナーが支配権を失う」といった先入観から、そもそも上場という選択肢を外されているケースが散見されます。やっぱりそれは、少しもったいないと思いますね。
TPMでは上場企業としてふさわしいレベルのガバナンスが求められる一方、東証の一般市場(プライム・スタンダード・グロース)とは異なり、株主数や流通株式比率といった数値基準がありません。私たちは中堅企業・中規模企業のM&Aやグループ経営、ホールディングス化を頻繁にお手伝いしますが、上場もそうした成長戦略の中に位置づけるべきであり、そこで価値を提供できると確信しています。
藁田
オーナー企業はカリスマ的なリーダーが引っ張ってこられたケースが多く、例えば事業承継に際してTPMを目指すことは、組織経営に変えていく一つの手段になると思います。
上場準備の過程でガバナンス体制が構築でき、トップ一人で全部決めてしまうような文化を変革することで、「公の企業」にステップアップできるはずです。
上場準備の過程でガバナンス体制が構築でき、トップ一人で全部決めてしまうような文化を変革することで、「公の企業」にステップアップできるはずです。
若松
創業から70年近く、さまざまな業界の経営者とお付き合いしてきた私たちには「1・3・5の成長の壁」、つまり年商10億・30億・50億円、また100億・300億・500億円で、企業が新たな壁を迎えるという経験則があり、そこからの成長に向けた条件整備のメソッドも揃っています。クライアントとは長期契約が過半数を占めていますから、1・3・5の成長の壁を越える戦略と一体で上場支援にも取り組めば、持続的成長に必ず貢献できると考えています。
貴社の他のサービスと上場支援の関係を教えていただけますか。
若松
トップマネジメントアプローチでのコンサルティングの基本となるのは「ビジョンづくり」です。まずトップと一緒に5年後、10年後どういう会社にしたいのかを描き、そこから逆算して条件整備をしていく。その中でTPMへの上場支援も選択肢になります。
例えば、上場して「採用力を身につける」という目的を達成しても、それだけではビジョンを実現できません。社員が定着するよう人事制度などもしっかり整え、採用強化を成長につなげていくことが大切です。そこで私たちの各種コンサルティングとJ-Adviserの業務を「両輪の関係」と位置づけ、同時並行で展開したいと考えています。
例えば、上場して「採用力を身につける」という目的を達成しても、それだけではビジョンを実現できません。社員が定着するよう人事制度などもしっかり整え、採用強化を成長につなげていくことが大切です。そこで私たちの各種コンサルティングとJ-Adviserの業務を「両輪の関係」と位置づけ、同時並行で展開したいと考えています。
上場可能性の検討は、成長企業の"必須科目"
上場支援は、企業を成長に導く戦略の一環なのですね。
若松
はい。「持続的成長の支援」というのが、私たちのTPM上場支援の大きな目的です。
国内では人口も企業数も減少に転じていますから、経営者にも成長戦略の質的な転換が求められています。2024年を「中堅企業元年」とした政府の政策も、そうした構造的課題の解決を図る動きだと認識しています。
私たちは中小企業をご同族に引き継ぐ際の資本政策もよくお手伝いしますが、親族内の承継でも、譲り受けた経営資源を活用してイノベーションに挑戦するといった意欲的な経営者が活躍されていますし、それほど大胆でなくとも「持続的成長で中堅企業を目指す」といった意欲は、トップに不可欠と感じます。
年商50億円前後で上場している会社と、300億円で未上場のオーナー企業を比べると、前者のほうがしっかり経営されているケースも珍しくありません。これはガバナンスの問題で、オーナーが身内の論理に留まり続ける限り、どこまで売上を伸ばしても経営は脱皮できないのです。
国内では人口も企業数も減少に転じていますから、経営者にも成長戦略の質的な転換が求められています。2024年を「中堅企業元年」とした政府の政策も、そうした構造的課題の解決を図る動きだと認識しています。
私たちは中小企業をご同族に引き継ぐ際の資本政策もよくお手伝いしますが、親族内の承継でも、譲り受けた経営資源を活用してイノベーションに挑戦するといった意欲的な経営者が活躍されていますし、それほど大胆でなくとも「持続的成長で中堅企業を目指す」といった意欲は、トップに不可欠と感じます。
年商50億円前後で上場している会社と、300億円で未上場のオーナー企業を比べると、前者のほうがしっかり経営されているケースも珍しくありません。これはガバナンスの問題で、オーナーが身内の論理に留まり続ける限り、どこまで売上を伸ばしても経営は脱皮できないのです。
藁田
単なる膨張でなく、真に成長しているのか。中小企業から中堅企業に育てるといっても、その中身が大切になります。
若松
上場についても、トップが一度きっちり勉強された上で、最終的に「しない」という判断はあってよいと思いますが、初めから選択肢に入れていないのは問題です。ですからJ-Adviserである私たちからもセミナー開催などを通じ、もっとTPMを知っていただきたいと考えています。
では、企業は上場を一度は検討したほうがよいと思われますか。
若松
そう思います。先ほどの「1・3・5の成長の壁」に即して言うと、年商50億円になったら、トップは必ず一度は上場という選択肢を考えないといけません。年商100億円になっても未上場であれば、今度は「なぜ上場しないのか」を説明できるくらい、きちんと整理しないといけません。
繰り返しになりますが、上場はあくまでも成長の手段というのが私たちの考えです。経営課題を見つけて治療する「ビジネスドクター」の立場から、従来「この程度の仕組みは揃えておかないといけない」と経験則でお伝えしてきた内容が、今回J-Adviserの立場でチェックする「上場適格性要件」として、より明確にご提案できるようになったということです。自社の現状を上場基準と照らし合わせて確認できる「Stage-up Review」は今後、一定規模以上のクライアントには"必須診療科目"としていくつもりです。
繰り返しになりますが、上場はあくまでも成長の手段というのが私たちの考えです。経営課題を見つけて治療する「ビジネスドクター」の立場から、従来「この程度の仕組みは揃えておかないといけない」と経験則でお伝えしてきた内容が、今回J-Adviserの立場でチェックする「上場適格性要件」として、より明確にご提案できるようになったということです。自社の現状を上場基準と照らし合わせて確認できる「Stage-up Review」は今後、一定規模以上のクライアントには"必須診療科目"としていくつもりです。
TPMをファーストステップに、その先の市場へ
TPMと他市場との関係も含め、今後の展望をお聞かせください。
若松
東証の一般市場では現在、上場維持基準の見直しが進められており、中には上場に向けた計画を見直す会社も出てきているようです。
将来に向けて着実にステップを踏み、実力を蓄えてから、あらためて一般市場に上場していく。TPMへの上場支援を通じ、私たちはそういった成長戦略のお手伝いをしていきたいと考えています。
将来に向けて着実にステップを踏み、実力を蓄えてから、あらためて一般市場に上場していく。TPMへの上場支援を通じ、私たちはそういった成長戦略のお手伝いをしていきたいと考えています。
藁田
私たちは、一般市場を目指す中堅企業・中規模企業のファーストステップとしての支援実績を加速度的に増やし、さらなるステップアップもお手伝いすることで、市場と一体化した新たなトレンドを作っていきたいと思います。
そのためにも、J-Adviser業務に必要なJ-QSの資格を持つメンバーを現在の5名からさらに拡大し、現場のコンサルタントと連携できる体制を確立していきます。
そのためにも、J-Adviser業務に必要なJ-QSの資格を持つメンバーを現在の5名からさらに拡大し、現場のコンサルタントと連携できる体制を確立していきます。
株式会社タナベコンサルティング
1957年創業の日本の経営コンサルティングのパイオニアで、純粋持株会社である株式会社タナベコンサルティンググループは東証プライム市場に上場。国内外の大企業から中堅企業・中規模企業のトップマネジメントを主要顧客に、創業以来18,900社以上の支援実績を有する。経営戦略の策定からDX等による現場での経営オペレーションの実装・実行まで、経営の上流から下流までを一気通貫で支援するチームコンサルティングを提供する。2025年5月にJ-Adviser資格を取得。10事業所から全国の中堅企業・中規模企業に対して、持続的成長へ向けてのIPOという選択肢を提案する。
