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コラム
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概要
デスクトップリサーチとは、既存の文献やインターネット、公開データなど、机上にある情報源から既存のデータを収集・分析する調査手法です。海外市場進出の初期段階で有効的な手法です。低コストで市場規模、競合状況、規制などを把握し、進出可能性やリスクを分析することで、効率的な戦略立案が可能となります。
はじめに
日本国内市場の縮小と企業の成長戦略
日本の経済は、少子高齢化や人口減少の影響を受け、国内市場の縮小が避けられない状況にあります。特に中小・中堅企業にとって、国内市場だけに依存するビジネスモデルでは、成長の限界が見え始めています。
さらに、国内市場の成熟化により、競争が激化していることも課題です。価格競争や差別化の難しさが企業の収益性を圧迫し、持続的な成長を阻む要因となっています。
このような状況下で、企業が生き残り、成長を続けるためには、新たな市場開拓が必須といえるでしょう。
GDPの国際的な地位の低下
日本の経済規模を示すGDP(国内総生産)は、かつて世界第2位を誇っていましたが、現在では中国・ドイツに抜かれ、さらに他の新興国の台頭により今後さらに国際的な競争力が低下していくと見込まれています。これに伴い、日本企業が国際市場での競争力を維持するためには、国内市場だけでなく、海外市場への展開が不可欠となっています。
特に、アジアやアフリカの新興国では、経済成長とともに中間層が拡大し、消費市場が急速に拡大しており、このような環境変化は、既存のビジネスモデルを見直し、新たな市場や価値創出の機会を探る絶好のタイミングであると捉えられます。今こそ、外部環境の変化を「ピンチ」ではなく「チャンス」と捉え、グローバルな視点で事業戦略を再構築することが求められています。
海外市場展開の第一ステップとしてのデスクトップリサーチ
しかし、海外市場への進出にはリスクも伴います。現地の文化や規制、競合状況を十分に理解せずに進出すると、思わぬ失敗を招く可能性があります。そのため、いきなり現地に赴いて調査を行うのではなく、まずはデスクトップリサーチを活用して、進出の可能性を見極めることが重要です。
デスクトップリサーチとは、インターネットや公開されている資料を活用して、特定の市場や業界について情報を収集する手法です。現地に赴くフィールド調査とは異なり、物理的な移動を伴わず、パソコンやスマートフォンを使って行えるのが特徴です。そのため、コストや時間を抑えながら、海外市場の概要を把握するのに適しています。

調査設計の基本
調査目的の明確化
デスクトップリサーチを始める前に、まず「何を知りたいのか」を明確にすることが重要です。例えば、「市場規模を把握したい」「競合の動向を知りたい」「現地の規制を確認したい」など、具体的な目的を設定しましょう。目的が曖昧な場合、収集する情報が散漫になり、調査の効果が薄れてしまいます。
ターゲット市場の選定
次に、どの国や地域をターゲットにするのかを決めます。ターゲット市場の選定には、人口規模、経済成長率、消費者の購買力などの指標が参考になります。また、自社製品やサービスがその市場でどのような価値を提供できるのかを考えることも重要です。
調査項目の設定
調査項目は、以下のように多岐にわたります。
• 市場規模:対象市場の売上高や成長率
• 競合:主要な競合企業の数やシェア
• 規制:輸出入規制や税制
• 文化:消費者の嗜好や購買行動
これらの項目をリストアップし、優先順位をつけて調査を進めましょう。

情報源の分類と活用法
公的機関
公的機関は、信頼性の高い情報を提供してくれる重要な情報源です。例えば、日本貿易振興機構(JETRO)は、各国の市場レポートやビジネス環境に関する情報を無料で公開しています。また、OECDや各国政府の統計データも有益です。
民間調査会社
StatistaやEuromonitorといった民間調査会社は、詳細な市場データを提供しています。ただし、これらのサービスは有料であることが多いため、必要な情報が明確な場合に利用すると良いでしょう。
業界団体・商工会議所
各国の業界団体や商工会議所も、特定の業界に特化した情報を提供しています。これらの団体のウェブサイトやレポートをチェックすることで、業界のトレンドや課題を把握できます。
ニュースメディア・専門誌
現地のニュースメディアや専門誌は、最新の市場動向を知るのに役立ちます。特に、業界特化型のメディアは、競合他社の動きや新製品の情報を得るのに有効です。
SNS・口コミサイト・レビュー
消費者の生の声を知るには、SNSや口コミサイトが有効です。例えば、InstagramやXで特定のハッシュタグを検索することで、現地のトレンドや消費者の反応を把握できます。

具体事例:デスクトップリサーチによる外部環境分析と市場参入仮説の検証
外部環境調査目次例
マクロ環境分析
①基礎情報
②人口動態・構成
③経済成長率
④一人当たりGDP
⑤都市部の一人当たりGDP(※下記ASEAN新興国3ヶ国)
⑥所得水準(富裕層・上位中間所得層の割合)
マーケット環境分析
①市場規模・成長性(歯科医療機器売上推移、売上成長率推移)
②業界構造(歯科医師・医院数、歯科医療保険・支出)
③競争環境(競合・ベンチマーク企業概要)
④業界トピック(有病率、政府の対応状況)
戦略仮説立案のための国別スクリーニングを実施

まとめ
日本企業は国内市場の縮小や国際競争力の低下に直面しており、海外市場への進出が成長戦略の鍵となります。進出にあたっては、まずデスクトップリサーチを活用して市場の概要を把握し、リスクを最小限に抑えながら戦略を立案するための情報収集が重要であるといえます。




















