COLUMN

2025.11.11

海外進出を成功させるグローバル人材育成戦略とは

目次

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海外進出を成功させるグローバル人材育成戦略とは

海外進出とグローバル人材の重要性

日本企業が直面する海外進出の壁

日本企業にとって海外進出は、成長戦略の中心的な位置を占めています。少子高齢化による国内市場の縮小、消費者需要の多様化、そしてグローバル競争の激化。こうした環境変化に対応するため、多くの企業がアジアや欧米市場に活路を見出しています。
しかし、海外拠点を立ち上げただけでは成功は保証されません。進出後に苦戦し、数年で撤退を余儀なくされる日本企業も少なくありません。その最大の要因として指摘されるのが「グローバル人材」の不足です。優れた製品やサービスを持っていても、それを現地市場に浸透させる力や組織を動かす人材がいなければ、成果は限定的になってしまいます。
「海外進出」と「グローバル人材の確保・育成」は切り離せないテーマであり、今後の企業成長に直結する最重要課題といえます。

海外展開に挑む日本企業が共通して抱える課題は、大きく3つに整理できます。

本社依存による意思決定の遅延

海外拠点が重要な意思決定をする際、本社承認を必要とする体制を敷いている企業は多いです。しかし、この仕組みは現地市場の変化に対応するスピードを著しく損ないます。新興国市場では、数カ月単位で消費動向や規制環境が変わることもあり、決断の遅さが致命傷になり得ます。

現地市場への適応不足

日本の商習慣やマネジメントスタイルをそのまま持ち込み、現地文化との摩擦を生むケースは後を絶ちません。採用・評価制度が現地人材に合わず定着率が低下したり、営業手法がローカル市場に受け入れられず販売不振に陥ったりします。現地化を進められない企業は、競合に後れを取るリスクが高いです。

グローバル人材の不足

語学力があるだけの人材や、海外赴任経験はあるが戦略的なマネジメント力に欠ける人材では、拠点を牽引するのは難しいです。結果として拠点の自立性が育たず、こうした状態では持続的な成長は望めません。

海外進出を支える「グローバル人材」とは

では、海外進出を成功に導く「グローバル人材」とはどのような人物像でしょうか。単なる語学力や海外生活経験ではなく、以下のような能力が不可欠となります。

異文化理解とマネジメント力

多様な価値観を持つ現地従業員と信頼関係を築き、組織をまとめる力です。単なる適応ではなく、文化の違いを経営資源として活用できる発想が求められます。

戦略構築力と意思決定力

市場分析や競合動向を踏まえ、現地で実行可能な戦略を描ける力です。さらに変化の激しい環境下で迅速に意思決定する判断力が重要となります。

本社と現地をつなぐ橋渡し力

本社の方針を現地に浸透させつつ、現地のニーズや声を本社に届ける調整力です。グローバル企業では「翻訳者」としての役割を果たす人材が不可欠です。

サステナビリティの視点

環境・社会・ガバナンス(ESG)を意識した経営視点を持つことです。海外市場では社会的責任を果たせるかどうかが、顧客や投資家からの評価を大きく左右します。

海外進出とグローバル人材の重要性

「グローバル人材」育成のポイント

海外拠点でのグローバル人材育成が難しい理由

日本企業が海外進出を進める中で、人材育成が思うように進まないという悩みは非常に多いです。最大の要因は、人材開発が短期的な視点に偏りがちである点です。多くの企業では、売上や利益といった即効性のある成果を重視するあまり、中長期的な人材育成への投資が後回しにされてしまいます。その結果、海外拠点の現地社員を育てる体制や計画が十分に整わず、場当たり的な対応に留まってしまうのです。

さらに、育成の仕組み自体が体系化されていないことも大きな課題です。語学研修やOJTといった手段は一定の効果を発揮しますが、それだけでは戦略的思考力や異文化マネジメント力といったグローバル人材に不可欠な能力を十分に育むことはできません。結果として、海外拠点のリーダー候補が育たず、本社からの派遣人材に依存する構造が固定化されやすいのです。

加えて、現地人材の定着率の低さも深刻な問題です。キャリアパスや成長の機会を十分に示せないまま採用を行うと、優秀な人材ほど短期間で離職し、せっかくの育成投資が無駄になります。海外市場では人材の流動性が高いため、企業側に長期的なビジョンと人材戦略がなければ人材の確保は難しいのです。

こうした状況が重なることで、海外拠点での人材育成は困難を極め、日本企業の海外展開を阻害する要因となっています。

日本企業に必要なグローバル人材戦略の方向性

このような課題を克服し、海外進出を持続的に成功させるためには、人材育成を「教育施策」ではなく「経営戦略の中核」として位置付ける必要があります。まず重要なのは、グローバル人材に求める能力を明確に定義し、それを段階的に高めていく育成ロードマップを描くことです。戦略的な人材育成は、単発の研修ではなく、組織全体で共有された目標設定と体系的な仕組みづくりから始まります。

さらに、認定制度や評価システムを導入してスキルを「見える化」することも重要です。どの社員がどのレベルの能力を持っているのかを明確にすれば、本人のモチベーション向上につながるだけでなく、企業としても人材配置やキャリア形成を戦略的に行えます。

「グローバル人材」育成のポイント

まとめ

人材育成は最大の成長戦略

日本企業が海外進出を成功に導くうえで「グローバル人材育成」は最も重要な要素の一つになります。単なる語学力や海外経験ではなく、異文化理解や戦略構築力、本社と現地をつなぐ橋渡し力、さらにはサステナビリティの視点といった能力を備えたグローバル人材こそが、海外拠点を自律的に成長させる原動力となります。

これらを明確に定義した能力モデルを基盤に評価を行うことで、企業は育成の方向性を具体化できます。さらに重要なのは、研修や海外プロジェクトへの参加を通じてスキルを磨き、その成果を認定として「見える化」する仕組みです。こうした育成と認定を一体化した仕組みを整えることで、個人は成長実感を得てモチベーションを高め、企業側も適材適所の配置や人材ポートフォリオの強化を実現できます。

結果として、認定を受けた人材が海外拠点のリーダーとして活躍し、持続的な成長を支えます。このように戦略的人材育成は、企業価値の向上そのものに直結する投資であり、日本企業の海外進出を成功へと導く鍵となるでしょう。

著者

タナベコンサルティング
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
コンサルタント

荒井 拓弥

ファッション商社にて販売、店舗マネジメント、出店、海外駐在、人事業務を経験後、ファブレスメーカーにて生産管理、バックオフィス管理、EC運営に従事。当社に入社後は、顧客に寄り添い現場から課題解決を導くことをモットーにしながら、BtoCビジネス分野を中心に、新規事業開発・戦略構築テーマで活躍中。

荒井 拓弥

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