前書き
HR Techについて、「聞いたことはある」「知っている」という方は多い。また、「導入を検討している」「既に導入している」という企業も増えてきた。これは、労働人口の減少や働き方改革により、生産性の向上など「人(従業員)」がフォーカスされたことが一つの要因と考えられる。
HR Techは「活用」ができれば、定型業務の削減・組織活性化・配置、転換等の意思決定の質の向上と強力な武器となる。しかし、導入・活用が上手く進んでいない企業もあるのではないだろうか。これは、導入検討段階に課題があることが多い。
HR Techとは?
HRテックとは、人事を表す「HR(Human Resources)」と「テクノロジー(Technology)」を掛け合わせた言葉です。
ツールの種類は幅広く、給与計算や勤怠管理・労務管理、採用管理、社内コミュニケーションなどを効率化するシステムだけではなく、人材配置やスキル評価、面接、退職予測などを分析するシステムも登場しています。
情報を一元化したり、業務を効率化するのにメリットが大きいとして、近年急速に浸透してきています。
クラウド型サービスが基本で価格が安価なものもあり、各企業の人事や労務管理にHRテックを取り入れられています。
国内市場が急拡大。HR Techの市場規模と注目される背景。
こちらの表によると、2020年のHRテクノロジーの市場規模は前年比115%、1,381億円に拡大し、2025年には3,278億円、2020年比約2.4倍に成長することが予測されています。現在1,000近くのサービスが確認されており、右肩上がりで市場規模が大きくなっています。
HR Techはなぜここまで日本で注目されているのでしょうか?
理由は4つあります。
1. 技術の進化
まずは技術の進化によって、物理的にHR Techのリリースが可能になったことが言えます。
AI技術の進歩やビッグデータ分析技術の進化により様々な人事業務に活用が可能になりました。
2. デバイス普及率があがった
リモートワークが通常化した今、PC・スマートフォン端末は社員一人一人に支給されています。現場担当者がおこなった面接の情報などを人事担当者が代理で入力する、といった古い体制はなくなっています。
3. クラウド型サービス(SaaS)の普及
以前の人事システムはソフトウェアのライセンスを購入し、自社サーバーで人事データを管理する「オンプレミス型」が一般的でした。しかし、新しいバージョンをアップデートするたびに追加課金しなくてはならなかったり、インフラ調整に時間が掛かったりすることから導入に踏み切れない企業が多くいました。一方、クラウド型サービスは、アカウント登録後すぐに利用できますし、初期費用が少なく手軽に利用できるためところがメリットです。
4. 需要のアップ
日本では、少子高齢化による労働力人口の減少や人材の流動化といったことから、転職は売り手市場となっています。生産年齢人口が減少傾向にある今、どの企業も人手不足が著しいので、優秀な人材を他社より確保したいと、採用管理システムの導入を検討したり、定着を期待する企業も多いです。また、働き方改革の影響による働き方の多様化により、管理体制をツールによって整えるなどHRテックを使った業務効率化が注目されています。
「HR Tech企業のカオスマップ」各システムの種類・特徴
現在日本では数多くのHR Techサービスが展開されています。サービスを一覧化して、カテゴリー別に分けたものを「HR Techカオスマップ」とよび、会社の課題を見つけた際、導入するサービスを選定するときに役立ちます。サービスカテゴリーをご紹介します。
HR Techサービスを大きく分けると下記のようなカテゴリーです。
- 「採用管理システム」
- 「勤怠管理システム」
- 「タレントマネジメント」
- 「マイナンバー管理システム」
- 「労務管理システム」
- 「経費管理システム」
- 「給与管理システム」
少しイメージが付きにくかったり、一般社員にはなじみのないシステムのみご紹介させていただきます。
採用管理システム
求人から採用までを一元管理することができ、選考の進捗状況も可視化できるようになります。業務工数の削減はもちろん、メールの自動送信システムで漏れのない連絡をしてくれるもの、ミスマッチを防いでくれるもの、といった様々なサービスがあります。
また各求人媒体の応募効果などを正確に把握することができたりと、ムダな採用コストを削減することが期待できます。
勤怠管理システム
打刻ができ、遅刻者や欠勤者が出た際のアラート機能であったり、顔認証で勤怠管理が行えたり、といった最新の便利な機能が備えられているものが多く存在します。
タレントマネジメント
人材管理・配置、人事評価、モチベーション管理ができるシステムで、社員の基本情報や能力・保有スキル・資格・経験をデータ化し、一元管理・分析して、適材適所の人材配置や育成にも活用でき、組織力の向上に期待できます。
経費管理システム
その名の通り、経費管理が行えますが、スマートフォンを使用し、領収書を撮影するだけで、経費精算できるなど最新のAIを搭載したシステムもあります。入力という作業が減り、忙しい営業の方にとっては大きなメリットです。
参考:HRテックガイド
HR Techを使いこなすために、何をしたら良いのか

「導入した」で終わらないための、HR Tech導入・活用手順
HR Techの主な導入・活用STEPは次のとおりである。
- STEP1
- HR Tech導入の目的・目標を明確にする。
- STEP2
- 上記に適した企業・システムを選定する。
- STEP3
- 人事データをHRテックに収集する。
- STEP4
- データを分析し、課題抽出と改善策の立案・実施を行う。
- STEP5
- サーベイ等を活用し、改善施策後の経過観測を行い、継続的にPDCAを回す。
- STEP6
- システム活用に向けた呼びかけにより、従業員の意識改革を行うとともに「変化をする会社」という風土を創る。

最も重要な「目的・目標」の明確化。
HR Techを導入・活用するための最初のSTEPは、目的と目標を明確に設定するである。
「そんなこと、当たり前」と言われるかもしれないが、明確にされておらず「どこも導入しているから(流行りだから)」「導入したら、良い会社になりそうだから」という漠然とした理由の企業もあるのではないだろうか。このような状態であれば、導入しても効果的な活用までは至らない。
わが社の、現状の課題・成長テーマは何なのか。HR Techはその解決に役立つか。どのように活用すると効果的なのか。あらためて考えていただきたい。
そもそも人事戦略はあるか・人事制度は明確か
HR Tech導入の最終的な目的は、「業績向上や持続的な成長」だろう。
しかし、この目的達成に向けたプロセスは、千差万別だ。どのようなプロセスにするかを決める人事戦略は明確になっているだろうか。そして、「経営システム」としての人事制度は機能しているだろうか。ただの給与を決める仕組みに留まっていないか。
まずは戦略・制度を見直すことから始める
HR Techは使いこなすことが出来れば強力なツールだ。しかし、あくまで人間が付加価値創造や生産性向上を実現するための手段である。まずは、活用目的を明確にするために人事戦略・人事制度を見直していただきたい。
この課題を解決したコンサルタント

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー三好 皓之
大手食品メーカーにて、製造現場のマネジメントと人事部門で採用・育成を中心とした人事実務を経験後、当社へ入社。現在はHRを専門領域とし、「笑顔で経営を、会社と従業員、その家族の幸せを」の実現を信条に、製造現場と人事の経験を活かし、組織と人づくりを通じ、顧客の成長と人材の成長の実現に取り組んでいる。
- 主な実績
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- 物流企業向人事制度再構築コンサルティング
- 金属部品メーカー向人事制度再構築コンサルティング
- 卸売業の中長期ビジョン構築コンサルティング
- 生産機器メーカーの事業再生コンサルティング
- 食品メーカーの幹部候補者育成支援コンサルティング
