人事コラム
人材育成

IT・システム業界における効果的なIT人材の育成方法

取り巻く環境を見つめ直し、自社の競争力強化に資するIT人材を育成する

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IT・システム業界における効果的なIT人材の育成方法

IT人材育成体制の再構築により、自社の成長を加速化させる

IT・システム業界におけるIT人材育成の課題

IT・システム業界におけるIT人材育成の課題

IT技術の発展が急速に進んでいるのは誰もが実感していることであろう。IotやAIの進化は目まぐるしく、いまやITが無ければ日々の生活が成り立たないと言っても過言ではない。もちろんそれは企業経営においても例外ではなく、ビジネスのデジタル化・DX化が進む中でそれらを駆使する人材の確保と育成が企業にとっての喫緊の課題となっている。

そして上記の影響をダイレクトに受けているのが「IT・システム業界」である。経済産業省が公表した「IT人材の供給動向の予測」では、エンジニアをはじめとするIT人材の不足数は2030年において約80万人になると試算されており、かつ平均年齢は右肩上がりの予測だ。また人材の量だけでなく、質の問題もある。同じく経済産業省が公表しているデジタル競争力ランキング2022では、日本は63カ国中29位と低迷しているのが現実だ。

IT人材の必要性は全企業が共通認識を持っているにも関わらず、解決への糸口を見いだせていない企業が多い。それはなぜか。主に3つの理由がある。

1. 学びや能力開発に投下する人材投資が不足している
2. ゆえにIT・システム業界が急成長しているのに反比例して、IT人材への体系的な教育、育成機能が構築されていない
3. 技術革新が早い業界であるにも関わらず、リスキリングの体制も整備ができていない

これらの課題を解決しようと政府では小学校でのプログラミング教育を必修化するなどの対策を打っているが、その効果が出るのは数十年先である。改めて全企業がIT人材の育成に本気で向き合う必要があるのではないだろうか。

IT・システム業界に求められる人材育成の戦略とは

IT・システム業界に求められる人材育成の戦略とは

IT・システム業界の特徴として、

1. 専門的な知識と技術が求められる
2. 一方で知識と技術は陳腐化されるサイクルが早く、常に学び直しも求められる

という二律背反の構造が挙げられる。つまりは一人前になるには時間を要するにも関わらず、じっくり学んでいたらその知識、技術は使えないものになっているということだ。

そこでIT・システム業界に向けたタナベコンサルティングが提唱する人材育成の戦略は、「バックキャスティングでの育成計画」と「学びの高速化」である。それぞれ紹介する。

「バックキャスティングでの育成計画」とは、例えば中期経営計画などと紐づけて3~5年スパンで必要となるIT人材の要件を洗い出し、要件を満たすための教育プログラムを構築することである。ポイントは複数年単位、中長期視点で考えることだ。年度単位で教育プログラムを組んでいる企業は多いが、その場合にはどうしても近視眼的になってしまう。専門的な知識、技術の習得に時間を要することを予め見込んでおき、3~5年後に到達したい"ありたい姿"からバックキャスティングで教育体系を見直すことを推奨する。

続いて「学びの高速化」である。自らの専門性を現場の実務でアウトプットしつつ、新たな知識や技術を学べる場を用意する。新たな学びはe-Leaningのようなデジタルプラットフォームの他に、社外有識者のセミナーや専門展示会への参加、海外を含めた先端技術に触れる機会の提供などが考えられる。専門性の実践と新たな学びを同時で行い、常にアップデートし続けられる環境の整備が求められる。

IT人材育成方法のポイント

IT人材育成方法のポイント

ここではIT人材を育成するための具体的なポイントを紹介したい。

1. 異文化交流からの学び
人材育成の要諦として「異なる価値観と触れることで人は成長する」という考え方がある。自らの経験や知識とは異なる人との関わり合いを通して新たな発見を得、そしてそれらを自らに取り込む瞬間が最も育成が促進される。これをIT・システム業界で考えるならば、外部との交流が必要であろう。一例としては大学や研究機関などとのアライアンス連携による学びが最近だとトレンドになりつつある。社内から飛び出し、外部との交流を促進することで、戦略的・効果的に人材育成を実現していくのである。

2. テクノロジーの活用
これまではリアルでの人材育成に重きが置かれてきたが、今後はより一層テクノロジーの活用に重きが置かれると予測される。テクノロジーとは一般的・標準的なe-Leaningだけではない。例えば、AIやVRを使った教育プログラムが新たに開発され、これまで以上に客観的・感覚的な学びを得る仕組みも一般化するであろう。ある企業ではプレゼンテーション力を向上させることを目的に、AIでプレゼンの内容を解析させ、点数化するという仕組みを導入し、人材育成へと役立てているケースがある。これらをすぐに内製化することは難しいが、外部リソースを上手く活用しながら実現していくことが求められる。

企業文化としての人材育成

企業文化としての人材育成

ここまでIT・デジタル業界におけるIT人材育成の課題と育成におけるポイントを述べてきた。
ただしどんなに素晴らしい仕組みを整えたとしても、学びに対する価値観が全社員で共有化出来ていなければ求める効果は得られない。つまりは学び・人材育成に対する企業文化も合わせてアップデートする必要がある。

そこでのキーワードは「教え・学び合う」である。

前述した通り、IT・システム業界の特徴として専門性の追求と学び直しが同時に求められる。そのためには自らの知識や経験を内に秘めるのではなく、積極的にオープンしていくことが重要だ。自らの学びを他者の学びに、他者の学びを自らの学びへと昇華し、教え・学び合いながら切磋琢磨する企業文化づくりがIT・システム業界こそ必要になる。

さいごに

本コラムでは、IT人材育成というテーマを扱ってきた。
IT技術の進化はこれまで以上に加速化し、IT人材の必要性は倍化していくであろう。改めてIT人材の育成に取り組む目的を再定義し、自社にとって最適な方法を選択いただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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