取材先様のお役職は、取材当時のもの、タナベ経営社員の役職は、2020年現在のもの
地域に密着し、普段のくらしを支える

感謝を伝え、絆を深める機会に(左)
スローガンと併せてロゴを刷新(右)
中国、四国地方でスーパーを展開するフジが設立されたのは1967年。母体は、広島県広島市の繊維問屋「十和織物」(現アスティ)だ。
戦後間もなく設立(1950年)された十和織物の初代社長・尾山悦造氏(フジの2代目社長)は、米国の流通視察を経て「これからは小売りの時代」と確信し、小売店のチェーン展開を決意。その後、実弟の尾山謙造氏を初代社長に任命して愛媛県松山市にフジを設立し、67年10月、宇和島市に1号店を出店した。1981年には念願だった広島県へ出店。今では四国と広島、山口の中四国地方6県に96店舗を展開する。
商圏内の少子高齢化や人口減少が進む中、2012年には「中四国くらし密着ドミナント」を経営ビジョンに策定した。店舗規模や店舗数を拡大する戦略から重点をシフトし、食品スーパーを中核事業と位置付け、地域に密着して消費者の普段のくらしを支える事業展開を推進している。
50周年を機に新たなCI、VIを策定
フジ 上席執行役員
営業関連統括部長 大西 文和氏 フジは2015年、創業50周年の節目(2017年)に向け、プロジェクトを始動させた。目的は、自社の歴史やブランド価値を全従業員で再認識して意識変革を行うこと、全てのステークホルダーに感謝を伝えること、そして、これからの新しいフジをつくることだ。
この一連のプロジェクトにおいて、CI(コーポレート・アイデンティティー)、VI(ビジュアル・アイデンティティー)の検討・刷新を実施した。今後のフジを担う30~40代の次期リーダーが検討メンバーとなり、彼らとトップの意見を合わせ、フジの目指す姿を描いていった。
その検討プロセスの中で、メンバー20名による計3日間の"合宿"を実施し、会社の強みやこれからのフジについて集中的に討議を重ねたという。その話し合いの末に導き出したのは、「地域のお客さまに『この街に、あってよかった。』と思われる存在になりたい」という思いだった。同社はこの言葉を新たなスローガンとして採用し、併せてロゴも刷新することとなった。
また、スローガンを実践するため、「まじめに、たのしく、あたらしく。」という新たな行動指針を策定。これも同メンバーが導き出した言葉である。創業時から続く「まじめ」な企業風土を受け継ぎつつ、「仕事を楽しみながら、新たなチャレンジを推進し、成長やお客さま満足につなげていこう」というあるべき企業文化を、分かりやすい言葉で表現した。
さらに、具体的な行動基準をまとめた「7つの習慣」を策定。行動指針や7つの習慣により、スローガンを具体的行動へ落とし込み、習慣化しやすいようにしたのだ。
「この街にフジがあってよかった、と話すのはあくまでお客さま。スローガンを実践するには、従業員一人一人がお客さまの目線で考え、行動することが必要」「CI、VIの刷新で従業員の意識・行動が変われば、ステークホルダーのフジに対する意識が変わり、フジの新しいブランド価値が育まれる」(フジ上席執行役員営業関連統括部長の大西文和氏)
同社はさらに2017年11月、従業員対象の日帰りイベント「創業50周年サンクスパーティー」を実施した。仲間へ感謝し絆を深めるとともに、フジの歴史を振り返り、未来のビジョンを共有することが目的だ。
役員も従業員も一緒になって盛り上がるライブ、フジの歴史をたどる劇、会社や顧客から従業員への感謝のメッセージ紹介、新しいCI、VIの紹介など盛りだくさんの内容で、5日間の実施期間中、合計6000人が参加する一大イベントとなった。
実行委員長を務めた大西氏は「"手作り"感の強い企画・運営だったが、その分得られた成果は大きく、まさに『まじめに、たのしく、あたらしく。』を体現するものになった。イベントを通じ、自分たちの仕事は単に商品を売ることではなく、その先にあるお客さま満足の追求であると実感できた。何より、一緒に働く仲間の大切さをあらためて感じた」と語る。
「個々の強みを伸ばし、活かせる会社」へ
「事業は人にある」という創業社長・尾山謙造氏の言葉にも表れる通り、フジは創業時から一貫して「人」を事業の中心に据え、人材育成に力を注いできた企業だ。
2018年からの中期経営計画では「人の強みを伸ばす、活かす」を人事のテーマに掲げる。ビジネス環境が多様化する中、一人一人の顧客にフィットするには多様な人材が必要であり、従業員個々の強みを伸ばせる組織風土や仕組みづくりが重要との考えからである。
こうした中、タナベ経営は2015年から係長・主任(初級管理者)の活性化教育を担当。成果を上げるための習慣化行動や、部下育成などの研修を通じて同社の人材育成を支援している。大西氏はこれらの研修も活用しながら、人材育成へさらに力を入れるという。
小売業を取り巻く事業環境は厳しいが、これからも「地域のお客さまのくらしを支え、地域を元気にする企業でありたい」と大西氏。創業時からの「人を大切にする経営」を受け継ぎ、「この街に、あってよかった。」といわれる存在を目指して、同社の挑戦は続く。
タナベ コンサルタントEYE

部長 戦略コンサルタント 影本 陽一
創業50周年を迎えたフジは、顧客の期待や要望に素早く的確に応え、喜び・楽しみ・新鮮な驚きを届けながら、フジの従業員も地域や顧客とつながり、成長していくことができる企業を目指している。『この街に、あってよかった。』という新スローガンの思いは新しいロゴにも込められている。地域の住民が集い、地域で愛されるブランド企業を目指す取り組みに期待せずにはいられない。
会社プロフィール
- 会社名
- 株式会社フジ
- 所在地
- 〒790-8567 愛媛県松山市宮西1-2-1
- TEL
- 089-926-7111(代)
- 設立
- 1967年
- 資本金
- 194億700万円
- 営業収益
- 3166億3800万円(連結、2018年2月期)
- 従業員数
- 4865人(2018年2月末現在)
- 事業内容
- 総合小売業(食料品、衣料品、日用雑貨品等の小売販売)
- URL
- https://www.the-fuji.com/